PinkFloyd / TheWall (1979)
◆ピンクフロイドがすんなり聴けるなんて、やはり夏が終わったからだと思います。一雨毎に秋めき、深まりゆく今だからこそ、めんどくさいフロイドでも聴く気になろうというものです。
◆フロイドの人気の秘密は、その“めんどくささ”ではないかと思います。効果音の最大利用、音響的にして同時に可視的、中期以降はコンセプトもますます明確になり、過去のリーダーの精神分裂といったエピソードなど、いろいろ訳わからないけどスゴイ、という感覚が人気を雪だるま式に増幅させたといえます。
◆様々な要素を持つフロイドだけに、好きな理由は人それぞれ。私は大きく分けると2つ。1つはフォークロック調の曲で見られる曲そのものの美しさです。『炎』の「WishYouWereHere」はそのジャンルの誰が作るよりも優れた楽曲だと思います。もう一つはDavidGilmourのギターと、それをバックアップする演奏や効果音などの演出力です。一般に、支持の多そうなRogerWatersのコンセプト主義は、訳を読まなければ解らない日本人ゆえの歯痒さがあり、Gilmourのギターを中心とする演奏こそがRogerの価値観を豊かに表現していると感じています。
◆『TheWall』は、Rogerのコンセプト主義が極まった'79年作品、2枚組ながら全米1位・全英3位となった大ヒット作ですが、後の映画化を睨んでいるため台詞の様な曲が多く、同じ曲が何度も出る(「レンガ」と「InTheFresh」)など、音楽的魅力の物足りない作品です。映画としてはボブゲルドフもアニメーションも衝撃的で、流れる音楽も主役として最大の効果を発揮していましたが、アルバム(音楽)だけの体験では名盤とは言えないでしょう。全米1位になった1-⑤もDavidBowieやヒゲ・短髪期のQueenにも似たビート系で魅力がありません。
◆そんな中、世界最高のギターソロと呼ばれている2-⑥「ComfortablyNumb」と続く2-⑦「TheShowMustGoOn」、これと同傾向の2曲1-⑥「Mother」と1-⑦「GoodbyeBlueSky」、この2つの流れが出色です。1-⑥ではアコースティックギターと僅かなキーボードが淡々続き、ためてためて放たれるGilmourのソロとその瞬間にフォローするキーボード・ドラムにこそ、Rogerのコンセプトを具現化するPinkFloydのバンドとしての底力を感じます。「Mother」は、何度も聴いていると実家を思い出します。イギリス人でまったく離れた存在のフロイドなのに、です。
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